79 私の名前は02

崇韓

14年前 

生まれた時から私に自由はなかった。 

韓女様に飼育され、食べるものも着るものも全部管理されそれご当たり前と感じていたから最初は何も思わなかった。 

でも少し大きくなって自我が芽生え、私は檻の中の家畜であると認識するようになった。 

死ぬのが怖い。 

でも自分の力ではどうしようもない。 

大きくなったと言ってもまだ8歳 

どうしたらいいかさえわからない。 

いつも韓女様が持ってくる『エサ』を食べてミルクを作るのに適した身体になるように飼育されるだけ 

コッコッコッ 

今日も韓女様が私のご飯を持ってきた。 

?? 

「さあ、お食べ。」 

あれ?今日の韓女様はいつもの人と違う。 

仮面をしている人は初めてだ。

ちょっとなんだか怖いな

いつもは何も言わずに『エサ』を置いていくのに…… 

仮面をしているからどんな顔をしているか分からないけれど優しい韓女様だったらいいのになぁ 

実験体の少女2 

「ありがとうございます。」 

私は教えられた通り最大限のお礼を込めてクンジョル(日本で言う土下座みたいなもの)で感謝の意を伝えた。 

?? 

「お嬢ちゃん、お名前はなんていうのかな?」 

名前……? 

初めてそんなこと聞かれた。 

実験体の少女2

「名前…… 

みんな私のことを02って呼んでます。」 

?? 

「それは名前じゃないでしょう?名前はないのかしら?」 

私に名前なんかない。 

あるのは識別番号と呼ばれる番号だけ 

実験体の少女2 

「名前…… 

名前はないです。」 

今まで必要じゃなかったからそんなこと考えたこともなかった。 

?? 

「そう…名前がないのね。 

じゃあ私がつけてあげる。」 

名前をつける? 

私に? 

なんだかこの人、思ったより親しみやすいな

実験体の少女2

「名前、ですか」 

?? 

「ん~~、何がいいかな。」 

仮面をかぶった女の人は真剣に名前を考えているみたい。 

?? 

「決めた、柊美香! 

あなたは今日から柊美香よ。」 

柊美香 

「柊美香ですか」 

私の名前は柊美香 

まさか韓女様からお名前をいただけるなんて 

?? 

「私の好きなアニメキャラからとったの。素敵な名前でしょ?」 

アニメ??

アニメってなんだろう?

柊美香 

「はい、光栄です。韓女様」 

私はもう一度クンジョルで最大限の霊をして韓女様にお礼を言いました。 

_______________________________________ 

ズバッ 

私は目の前にいた韓女を有無も言わせず一刀両断にした。 

今の私に昔のような慈悲や人を殺める戸惑いはない。 

雪が降り積もる中、深夜にテヒの館(正確にはあいつの従姉のソヨン社長らしいが)に到着した私は邸宅を囲む裏庭の塀を見上げていた。 

伊達皐月 

(裏庭の塀、結構高いな…… 

でも登れないほどじゃない。) 

韓女の邸宅に不法侵入するのは私くらいのものだろうな 

高い塀を登って裏庭に侵入すると私はすぐに姿勢を低くして近くの噴水に身を隠した。 

伊達皐月 

(誰もいない……。見張りの一人や二人いるものだと思っていたけれど) 

雪が降り積もっていたのは運がいい。 

あまり物音を立てることなく私は邸宅の大きな窓までたどり着くことができた。 

そっと窓に手をふれると… 

ガラガラ…… 

伊達皐月 

(あいている…) 

鍵がかかっていないなんて… 

伊達皐月 

(さすがにおかしい) 

だからといって今更引き返すことはできない。 

どちら道、今回は支部を襲撃するのとは訳が違う。 

伊達皐月 

(死ぬ覚悟はできている。) 

私は意を決して邸宅に上がり込んだ。 

廊下を進むと地下に降りていく階段が見つかる。 

日本人を幽閉するなら地下が妥当か 

行方不明になった知り合いは支部にはいなかった。 

ここならもしかしたら知り合いのだれかはいるかも知れない。 

階段を抜けるとあたりは一変してコンクリートでできた無骨な部屋にたどり着いた。 

伊達皐月 

(暗がりの奥に誰かいる……) 

明かりをつけるわけにはいかない。 

私は持ってきた日本刀を抜いてあたりを警戒しながら目の前の人間に近付いた。 

伊達皐月 

(鎖…………、拘束されているのか?) 

だとしたら日本人かもしれない。 

伊達皐月 

«おい、大きな声を立てるな。» 

私は目の前の人間に近付いて小さな声でつぶやいた。 

少しずつ暗がりに目が慣れてきて目の前の人間に首枷がついているのが見えた。 

___男か 

韓女ではないみたいだな 

??? 

«う…………うぁ…………» 

そいつは相当弱っていたのか私が声をかける直前まで眠っていたようだ。 

近付くにつれその男の凄惨な姿を確認できるようになった。 

伊達皐月 

(刃物…ナイフのようなもので滅多刺しにされている。急所はうまくさけているようだがこれじゃあ長くは持たないな。) 

足首を確認してみたがアキレス腱もやられている。 

残念だが逃がしてやることもできそうにない。 

??? 

«さ、皐月なのか………» 

私はその声を聞いてはっとした。 

この声に聞き覚えがある。 

伊達皐月 

«し、新城…修一なのかっ!?» 

あまりにもやつれていたせいか、それとも電球一つない地下の暗い部屋だったせいなのか、全然気付かなかった。 

目の前にいるのは新城修一。 

私が探していた幼馴染の一人。 

伊達皐月 

«お、おいっ   これは… 

誰にやられたんだっ 

何があった!?» 

私は修一の体を再度確認した。 

切り傷から血が噴き出し、そのまま固まっている。 

傷口も適切な処置もされていないため、感染が進行し、壊死してきている。 

伊達皐月 

«くそっ» 

修一はもう長くない。 

もって、数日…… 

いや、明日を迎えるのも厳しいのではないだろうか 

私は当然医者でもない。 

ただの剣術が得意な高校生だ。 

それでも目の前の幼馴染がどういう状況か、彼の生気のない目が私に現実を突きつけた。 

伊達皐月 

«誰にやられたっ?言うんだ。私が、私が敵をとってやる» 

殺してやる 

修一をこんな目にあわせた韓女をっ 

伊達皐月 

«テヒか?パク・テヒにやられたのかっ?» 

新城修一 

«…………………………» 

修一はなぜか何も話さなかった。 

犯人をなぜ言わない? 

私が返り討ちにあうと思っているのか? 

新城修一 

«もう、いいんだ。それより皐月……» 

伊達皐月 

«な、なんだ?言ってみろ» 

私は修一の言葉を聞き漏らすまいと耳を修一の口元に近づけた。 

新城修一 

«殺して……くれ» 

! 

私はその言葉を聞いて思わず体を硬直させてしまった。 

確かに修一の命は長くはない。 

それはわかっている。 

伊達皐月 

«何言ってるんだっ。優衣と、優衣とまた会うんだろ??» 

私は行方不明になったもう一人の親友の名前を口にした。 

優衣と新城は付き合っていた。 

新城は最後に私に優衣と話してくるといったきり行方不明になったのだ。 

新城修一 

«優衣は…………… 

もういいんだ。 

俺を殺したらお前はすぐに逃げるんだ。 

ここは………地獄だった。» 

伊達 

«なんでそんなこと言うんだ。優衣が悲しむだろう» 

父が殺されたときでさえ私は泣かなかった。 

むしろ怒り、憤怒を刀に込め韓女どもに叩き込んだ。 

しかし、彼の前では修一の前ではそれができなかった。 

新城修一 

«優衣は、悲しまない。お前の、皐月の言う通りだったよ。あいつは変わってしまった。» 

やはり、修一でも優衣の心は取り戻せなかったのか 

伊達皐月 

«ならば私が悲しむっ 

優衣が悲しまなくても私が悲しむ。 

お前のことが好きなのは優衣だけじゃないんだぞっ» 

こんなことならもっと早く気持ちを伝えておくんだった。 

優衣の彼氏になってから私は自分の気持ちを抑え、二人の幸せを願った。 

剣士に恋愛は不要と自分に言い訳して 

新城修一 

«はは、それは知らなかったな。» 

うぅ゙っとうめき声をあげて新城が姿勢を崩す。 

伊達皐月 

«し、修一っ» 

私は彼を抱きかかえるとべっとりと彼の血が私に付着した。 

新城修一 

«もう俺は助からない。それくらい自分でもわかってる。 

もうお前しか頼めるやつがいないんだよ« 

確かに修一はもう助からない。 

だからと言って… 

伊達皐月 

«だからと言って私にお前を殺せというのか……» 

私は韓女への憎しみと修一を失う悲しみで心が張り裂けそうたった。 

新城修一 

«はは…ごめんな» 

私はそっと新城を元の位置に座らせると剣を抜いた。 

伊達皐月 

«……………わかった» 

せめて苦しまないように一瞬で逝かせてやる。 

悩んでる暇はない。 

いつ奴らが来てもおかしくないんだ。 

私は剣に意識を集中させ、修一に狙いをつけた。 

伊達皐月 

「修一、最後に言うことはあるか?」 

新城修一 

「……………………もし、生まれ変わったら付き合わねぇか?」 

こいつは…… 

最後までこいつらしい 

明るくて 

陽気で 

人懐っこい……… 

伊達皐月 

「ああ、そうしよう」 

キンッッッッ 

ズバッ 

私の鞘から放たれた一閃で勢いよく新城の首が飛ぶ。 

私は震える手で彼の首を抱きしめると声を出さずに泣いた。 

自分の想い人を殺める日がくるなんて思いもしなかった。 

つい最近まで平和に生活をしていたのに 

まさかこんなことになるなんて 

伊達皐月 

「修一……案ずるな。 

私もすぐに逝くから」 

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