53ソヨンの疑念

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53ソヨンの疑念 

ソヨン 

(この女はいったい誰なんだ?) 

私は以前プリントアウトした黒髪の女性の写真を眺めながらテヒを連れて皇愛梨の住む邸宅に向かっていた。 

この黒髪の女性は100年以上前から変わらない姿で大韓民国総督府の政府要人の周りにいるところを写真に撮られていた。 

人間が老いもせず100年も生き続けられるはずはない。 

しかもそんな人間が政府高官のまわりに100年以上ずっと居続けるというのも不自然だ。 

テヒ 

「ねぇ、姉様ぁ、何見てるんですかぁ?」 

テヒは私と一緒に出かけることができて上機嫌だ。 

私としてはこの子をこんなところに連れてきたくはなかったが皇と争うことになればこの子なしでは逃げ切れないのも事実。 

ソヨン 

「お前は知らなくていい。」 

私は資料をしまい、運転に集中した。 

テヒ 

「ぷぅぅ〜、姉様の意地悪っ」 

ソヨン 

「テヒ、さっきから何度も言ってるが今から会いに行く日本人は普通の日本人じゃないんだ。」 

テヒ 

「もぉ~、さっきからそればっかり。 

せっかくお姉様との2人っきりのデートなのに冷めちゃうことばっかり言わないでよぉ」 

テヒはさっきからずっとこの調子でまるで緊張感がない。 

ピクニックかなにかと勘違いしているんじゃないか? 

やはり日本人だからと皇を軽く見ている。 

ソヨン 

「私が何度言ってもその調子だから言ってるんじゃないかっ。 

いいか、デートじゃないんだよ。ユナを救いに行くんだ。 

もっと緊張感持たないと車から放り出すよ!」 

テヒ 

「ぷうぅぅ〜」 

テヒは口を膨らませ、顔全体で不満を表現する。 

くぅ 

ちょっとかわいいかもと思ってしまったがなんとか表情には出さないようにできた。 

皇の家は行ったことはないが場所は覚えている。 

首都高速を抜けて私はやつの家を目指した。 

…… 

………… 

家についた頃にはもう夜の8時を回っていた。 

ピンポーン 

テヒ 

「インターホンを鳴らすんですか?」 

ソヨン 

「まずは話し合いだ。 

こいつ相手に拗らせると厄介だからな。テヨンの処刑まであと4日しかない。面倒事をこれ以上増やしたくないんだ。」 

テヒ 

「ふーん。」 

テヒのやつ、ホントに大丈夫なんだろうな…… 

ガチャ…… 

扉を開けたのは愛梨ではなかった。 

咲希 

「ようこそいらっしゃいました。ソヨン社長。」 

ソヨン 

「!_______まるで私たちが来るのがわかっていたみたいだな。」 

GPSの存在に気付いていたのか? 

やはり油断ならないな 

テヒ 

「姉様、あの子、とっても可愛い」 

ソヨン 

「はぁ…頼むから黙っててくれ、テヒ」 

だめだ。 

ストレスで胃に穴があく… 

ソヨン 

「中に皇はいるのか?あー、、、」 

咲希 

「咲希と申します。中で愛梨様はお待ちです。どうぞお入りください。」 

ソヨン 

「わかった。」 

私は緊張した面持ちで玄関に入る。 

テヒが先程のチョッパリに笑顔を振りまいているのが見えたがもう気にしないことにした。 

咲希 

「こちらにございます。」 

案内されたのは部屋というより監禁場所のようなところだった。 

まあ私達も日常的にチョッパリを捕獲しては拷問のようなことしているのでまあなんとも思わないが…… 

テヒ 

「姉様、姉様っ」 

ソヨン 

「なんだ?」 

テヒが後ろから話しかけてきて私はテヒのほうを振り返った。 

テヒ 

「姉様、さっき車の中で見ていた写真の背の高い黒髪の女の子……」 

ソヨン 

「テヒ、今はそれどころじゃないだろう? 

今から皇と交渉するんだ。もっと緊張感をだな……」 

テヒ 

「目の前にいるよ」 

ソヨン 

「えっ!?」 

ゾクッ!!! 

私はテヒの言葉に背筋をぞくりっとさせ、慌てて前を向き直した。 

愛梨 

「いらっしゃい、ソヨン」 

ソヨン 

「す、皇愛梨なのか?」 

愛梨 

「? 

私に会いに来たんじゃないの?」 

髪の毛を染めるのをやめて長くしたのか? 

茶色かった髪の毛は真っ黒になっており、髪の毛もミディアムからロングに伸びている。 

顔つきも瞳が前より鋭くなって人相まで変わっているような… 

もしこれで声まで変わっていたら皇だとわからなかったかもしれない。 

そしてテヒの言う通り私が追い続けていた写真の女にそっくりだ。 

なんだ

この得体のしれない寒気は・・・

愛梨 

「要件はこいつでしょう?」 

愛梨が指さした先には椅子に座らされているユナがいた。 

ソヨン 

「ユナ……、大丈夫か?」 

目の前の椅子に拘束されているユナは意識がないのか、こちらには全く反応しない。 

ソヨン 

「何が望みだ?美香の居場所か?」 

この写真との関係も探りたいところだが今はユナを救い出すのが先だ。 

愛梨 

「わかっているならさっさと答えなさい」 

猛獣…というか虎のような女だ。 

ソヨン 

「ユナの解放が先だ。」 

愛梨 

「舐めてるの? 

この女の首をへし折るなんて簡単なんだけど?」 

いつも以上に苛立ってるな。 

ソヨン 

「美香の場所はミリンに聞けばいいだろう?」 

愛梨 

「?誰よ、そいつ」 

ソヨン 

「え?」 

愛梨 

「?なによ」 

え? 

ミリンを知らない? 

どういうこと? 

ソヨン 

「私の会社に乗り込んできたときに一緒についてきた女のことだよ。 

隠しても無駄だ。社員からも聞いてるしな。監視カメラにも写っている。」 

愛梨 

「理沙のこと?」 

理沙?どういうことだ? 

偽名を使って愛梨に近付いていたのか? 

それともハン・ミリンのほうが偽名なのか? 

愛梨も困惑しているようだ。 

ソヨン 

「とっくにミリンから美香の場所を聞いていると思っていたがな」 

愛梨 

「…………詳しく話せ」 

愛梨がユナの首を片手で締め上げる。 

ミシミシ…… 

ユナ 

「あっ………かはっ………」 

ソヨン 

「ま、待て待てっ。 

私たちは話し合いに来たんだ。 

美香の場所ももちろん教える。 

だからお前も落ち着け。」 

私はポケットに入れていた地図を取り出した。 

ここに来る前からもう決心はついていた。 

テヨンを失うくらいなら私は大韓民国総督府を裏切る。 

もともとアイツラにはイラついていたからな。 

それにソヒョンの手にした情報… 

『ユジン様はすでに死んでいる』 

というのが本当なら大韓民国総督府はサランべかミリンに乗っ取られているということになる。 

ソヨン 

「ここに美香がいるはずだ。」 

地図と場所を指し示したことでだいぶ愛梨は落ち着いたようだ。 

愛梨 

「本当だろうな?」 

まあ疑うのも無理はない。 

もともと私達は犬猿の仲。 

信頼関係などあろうはずがないのだ。 

ソヨン 

「私も一緒に行ってやろう。その代わりお前らも私の用事に付き合え。」 

皇と手を組んでテヨンを助けに行けるなら成功率は格段に上がる。 

愛梨 

「お前らの用事って?」 

ソヨン 

「私の会社の社員の救出だ。」 

愛梨 

「くく、仲間割れか。みっともない。」 

なんとでも言え。 

とにかくこいつを味方に引き入れれたらテヨンを助けることができる可用性がぐっと上がる。 

テヒ 

「저기요, 조금 신경 쓰이는 게 있는데요」 

ソヨン 

「_______!?」 

愛梨 

「?」 

テヒが突然韓国語を喋りだした。 

私はテヒの意図を察して冷や汗を流したが愛梨は韓国語がわからなかったらしく怪訝な顔をしている。 

テヒ 

「あ、すいません。ついつい韓国語で喋ってしまいました。よろしくお願いしますって言ったんです。」 

いや、そんなことは言ってない。 

テヒが言ったのは 

″ちょっと気になることがあるんですけど″ 

と言ったのだ。 

しかし、やはり愛梨は韓国語がわからなかったらしくテヒの嘘に気づいたそぶりは見せていない。

やはり皇は韓国人ではないのか 

愛梨 

「お嬢ちゃん、私の前で韓国語で話さないで。 

まだ死にたくはないでしょう?」 

愛梨の殺気立った視線がテヒを貫く。 

テヒ 

「ごめんなさい、愛梨さん。 

最近こっちに来たばかりでまだ慣れていないんです。」 

テヒは悪びれる様子もなく、笑顔で愛梨に謝罪する。 

愛梨を挑発する危険な賭けだったが私たちはその賭けにどうやら勝ったようだ。 

愛梨は………韓国語はわからない。 

つまり韓国人ではないと言うこと。 

これでこいつとテヨンを救いに行っても寝首をかかれる可能性は減ったということだ。 

しかし、昔の資料を漁って見つけた写真の女と同じ顔をしている。 

そこに大きな疑念は残るが…… 

愛梨 

「肝のすわったガキじゃん、ソヨン。 

で、理沙の情報は渡してくれるんだよね?」 

ソヨン 

「もちろんだ。」 

まさか、皇がハン・ミリンのことを知らなかったとは予想外だが知らないのであればミリンの情報を愛梨に渡しておいて間違いはないだろう。 

ただし、これで私は完全に国家反逆罪に問われることになるが…… 

テヒ 

「…………………………」 

ソヨン 

「ハン・ミリンはもともと私の会社の秘書だったんだ。副社長も兼任させていたから実質うちのno.2だったわけ。」 

愛梨 

「ふぅ〜ん。韓国人だったとはね。」 

背丈やスタイル、足の長さで気付きそうなものだけどな。 

ソヨン 

「ミリンはどこなんだ?」 

愛梨 

「しばらく帰ってきてない……」 

よかった。 

もしここに帰ってくるようならまずいことになる。 

ソヨン 

「うちにも帰ってきていない。おそらくテヨンや美香が幽閉されているところにいるんだろう。4日後に一緒に行って2人を救出しよう」 

愛梨 

「………わかった」 

信頼関係も何も無い共闘だが総督府に私一人で行くよりずっといい。 

ソヨン 

「じゃあ帰っていいか?」 

私はユナを抱えてドアを出ようとした。 

愛梨 

「あ?良い訳ないだろう? 

部屋を与えてやるからそこで寝ろ。」 

まあそうなるよな 

ソヨン 

「…………ユナとテヒだけでも帰してくれないか?」 

テヒ 

「え?嫌です!姉様と離れたくないっ」 

なんでそうなるんだ? 

こんな危険な場所にいたいのか? 

コイツの神経の図太さには感嘆するな。 

私と離れたくないだけで皇の邸宅に泊まろうとするなんて 

愛梨 

「美香の顔を見るまで三人ともここから出すつもりはない。」 

やはりか…… 

ソヨン 

「ユナはお前の拷問のおかげで重症だ。 

テヒに連れて帰らせる」 

ここは譲れない。 

絶対にだ。 

ユナは思ったよりもかなり衰弱している。 

咲希 

「愛梨様、ソヨン社長がここに滞在されるのであれば裏切りの心配もないと存じますが………」 

愛梨 

「……………………………」 

どうなる…… 

ここで衝突せざる得ないか…… 

愛梨 

「いいだろう。咲希、奥の部屋にソヨンを案内して。 

残りは好きになさい」 

咲希 

「承知いたしました、先輩」 

皇愛梨を動かすとは 

咲希とか言ったか?この女、そこまで皇の信頼を得ているのか? 

どちらにしても助かった。 

ソヨン 

「じゃあここでお別れだ。 

テヒ、ユナを連れて帰りなさい。ヘギョンに連絡して迎えに来るように伝えるから」 

ユナ 

「ぷぅぅぅ、こんなはずじゃなかったのにぃ」 

どんなつもりでここに来たんだよ 

全く本当にヒヤヒヤするやつだ。 

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