72恐怖

崇韓

それは異様な光景だった。 

北条春奈 

「テーハーミング・マンセーッ! 

ソン・ヘギョン先生・マンセーッ!」 

私は韓女への忠誠の言葉を大きな声で叫んでいた。 

前回の事件があってからクラスメイトは誰も私に話しかけてこなくなった。 

というかクラス全体が静まり返っており会話がほとんど聞こえなかった。 

今日はヘギョン先生の授業。 

韓国への奉仕の重要性などを勉強させられている。 

韓女たちはこの授業に特に重要視しているみたい。 

私達を洗脳するのが目的なんだと思う。 

もしこの授業で居眠りしたり聞いていなかったりしたらひどい罰を受けることになるらしい。 

私のクラスではいなかったけれど他のクラスでこの授業を欠席した生徒がいてその子は出荷されたと聞いた。 

『出荷』の意味は分からなかったが行方不明になったと聞いているからもしかしたら殺されたのかもしれない。 

ソン・ヘギョン 

「北条さん、良い声ですね。 

皆さんも見習うように。」 

この人はまるで蛇のよう。 

少し細い目に青い瞳、青みがかかった黒髪。 

この人に睨まれると蛇に睨まれた蛙の気分がよくわかる。 

北条春奈 

「ありがとうございます!」 

私は大きな声で返事をした。 

そうしないとどうなるかわからないから 

ソン・ヘギョン 

「それに比べて天王寺さん、 

あなたは声が少し小さいですよ」 

カチッ 

天王寺里緒菜 

「イギギィィィィッッッ💕💕💕!」 

ヘギョン先生がスイッチを押すと里緒菜に仕込まれたバイブが振動する。 

あの体育の授業以降、クラスのみんなだけでなく、全校生徒にバイブとGPSの仕込まれた首輪が付けられた。 

女の子にはおまんこに、男の子はお尻にバイブが装着されている。 

少しでも反抗したり、韓女の機嫌を損ねると媚薬入りのバイブが起動してしまう。 

北条春奈 

(最初は韓女が怖くて仕方がなかったのに…… 

テヒお姉ちゃんしか信頼できる韓女はいなかったのに…… 

今は自分でも何が何だかわからない) 

気持ちが落ち着いていて理性が働いている時はすぐにでも逃げたい気分になる。 

今だってそうだ。 

早くこんな監獄のような学校から逃げ出したい。 

でもウンギョン先生に犯されたとき、一瞬、このままでもいいかもって思ってしまった。 

北条春奈 

(完全におかしくなってしまう前になんとか逃げないと………) 

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イ・ウンギョン 

「今日の授業は上級生との合同演習ね。まあ、と言っても三年生はほとんど出荷されたから残っているのはテヒと麻宮だけだけどw」 

ウンギョン先生が恐ろしい言葉を平気でスラスラ言う。 

上級生、しかもテヒお姉ちゃんとの合同演習。 

今日はプールで水泳の授業らしい。 

前ならすごく楽しみにしていたけれど今は不安や恐怖のほうが大きい。 

どうしよう 

話かけたら優しいテヒお姉ちゃんに戻っていたりするのかな

北条春奈 

(そんなわけないよね……) 

希望的観測はやめよう。 

もうお姉ちゃんのことは忘れたほうがいい。 

今はなんとか逃げることだけを 

それだけを考えないと 

イ・ウンギョン 

「テヒ、麻宮、下級生の『指導』、しっかりヤれよ」 

ウンギョン先生がニヤニヤしながら2人に声を掛ける。 

ふと、私は麻宮先輩をチラッと見た。 

麻宮先輩、なんだか前と顔つきが違う 

瞳の色、緑色だったっけ? 

あれって韓女の瞳の色なんじゃ……… 

イ・ウンギョン 

「よーし、じゃあ自由形で500m、始めろ」 

え? 

500m!? 

水泳部でもないのに 

泳げない人もいるのに 

麻宮麗華 

「ぼおっとしてないで、早く飛び込みなさい」 

1コースから順番に麻宮先輩が生徒の背中を押していく。 

私は8コースで一番端っこ 

どちら道、逆らったらただじゃ済まないんだ 

それに水泳部だった私にとって500mくらい大した事ない。 

頑張れば3000mは泳げる。 

私は麻宮先輩がこちらに来る前にプールに飛び込んだ。 

ドプンッッ! 

飛び込んですぐ私はプールの水の違和感に気づいた。 

ドロっとしたまとわりつくような水 

明らかに普通の水とは違う。 

北条春奈

(え……?) 

このプールの水、なんかおかしい…… 

もしかしてこの水って…… 

北条春奈 

(媚薬だっ) 

これは合同演習なんかじゃない。 

ここでウンギョン先生たちはみんなを薬漬けにするつもりなんだ。 

それにすぐに気づいた私は慌ててプールサイドに上がろうとした。 

パク・テヒ 

「あら、春奈。どうして勝手にプールから上がろうとしているのかしら」 

プールサイドに手をかけるとテヒお姉ちゃんがプールから上がろうとした私を静止する。 

北条春奈 

「だ、だって…………この水………」 

パク・テヒ 

「泳ぐまで出れないわよ?」 

北条春奈 

「あ………ぁぁ……」 

泳ぐしかない 

500m全速力で泳いでなんとか薬が身体に吸収されるのを少しでも減らすしかない。 

私はすぐに体を反転させて水に飛び込んだ。 

水じゃないからか浮力が強い。 

北条春奈 

(これなら、私はいけるかもしれない) 

ちらっと隣のレーンを見るとすでに泳ぎをやめて止まってしまっている子たちがいた。 

プールはそこまで深くないので溺れているわけではない。 

ただ、立っては泳いで立っては泳いでを繰り返しているのでなかなか前に進めていないようだった。 

北条春奈 

(あんなスピードじゃあすぐに薬漬けにされちゃう) 

私だって500mも泳がないといけないんだ。 

私はすぐに踵(きびす)を返して泳ぎだした。 

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