相澤勇斗
「ソフィア様、ここです。」
昔、皇の家に侵入したことがあったため、僕は彼女の家をなんとなく覚えていた。
僕にとっては悪夢でしかない事件だったけれどその場所を覚えておいたおかげでソフィア様の役に立つことができた。
皇愛梨
「あら、久しぶりじゃない?
一瞬、誰かわからなかったわ」
皇は僕のことをほとんど忘れていたみたいで最初は誰かわかっていないみたいだったけれどしばらくしてバカにしたような笑みを浮かべた。
………あれからかなりの月日が流れた。
皇の容姿もだいぶ変わったな。
てか、本当に変わった。
こんなに背が高かったっけ?
それに黒髪になったし、髪の毛もずいぶん長くなったな。
いや、あのとき僕は中学生だったし、しっかりは覚えていないけれど……
相澤勇斗
「久しぶりです。今日はお話があってきました。」
皇愛梨
「負け犬が私になんの用?」
残忍な笑みに殺気を乗せて愛梨が僕に近づく。
ビクッ
皇の殺気に本能的な恐怖を覚えて僕は後退りする。
相澤勇斗
「ひっ あ、あの……」
ソフィア・ベルガラ
「私の奴隷をそう虐めないでいただけますか?皇様」
震える僕の手を優しく握りしめ、ソフィア様が皇と僕の間に割って入る。
皇愛梨
「お前は………ドイツ人か」
ソフィア・ベルガラ
「日本人でありながら何人もの韓国人を手駒にしてきたあなたと少しお話がしたいのですがお邪魔してもよろしいですか?」
ソフィア様は皇を褒め称えながらあくまで丁重に皇と対峙した。
皇愛梨
「あいにく時間がないんでね」
バタンッ
皇がドアを閉じる。
相澤勇斗
「柊先輩のことについてでもですかっ!?」
僕は慌てて大きな声で皇を呼び止めた。
ここで皇と話し合わないわけにはいかない。
ギィッ
一度しまったドアが再び開く。
皇愛梨
「……………つまらない話だったら即、追い出すわよ?」
相変わらず殺気だった瞳は赤く輝き、まるで獲物に飢えた虎のように見えた。
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パク・ソヨン
「なっ!?これはどういうつもりだ、皇っ!」
突然ドイツ人を連れてきた皇に私は困惑した。
皇愛梨
「私の家に誰を連れ込もうと私の勝手でしょ。咲希、お茶出して」
確かにそうかもしれないが時と場合による。
最初、私は嵌められたのかと思って焦ったがどうやらそうではないみたいだ。
パク・ソヨン
(そもそもすでに韓国を裏切った身。
むしろ韓国人を連れてこられたほうが困る、か)
皇愛梨
「座れ、ソヨンもだ。」
私も話を聞いていいのか?
ドイツ人の女が座った席に咲希がお茶を配る。
ドイツ人についてきた男はドイツ人の後ろで待機していた。
首輪をつけられているところをみると彼女の奴隷なのだろう。
咲希
「粗茶ですが……」
ソフィア・ベルガラ
「ありがとう」
ドイツ人は咲希に笑顔で笑いかけた。
思いの外、人当たりがいい人間みたいだが……
皇愛梨
「で?話って何?考えて喋りなよ。
そのお茶が人生最後の飲み物になるかもしれないしね」
こいつ(皇)の人当たりは最悪だな。
柊美香のことで相当イライラしているみたいだ。
ソフィア・ベルガラ
「もちろんです。お話する前に念の為に確認なのですがそちらはアゼクコーポレーションのソヨン社長で間違いないでしょうか?
これから話すことは軍事秘密に関わることなのでそれが確認できないとお話できません。」
パク・ソヨン
「………………!」
私の顔は別に秘密にしているわけではない。
アゼクコーポレーションのホームページには社長として当然掲載されている。
私が驚いたのはパク・ソヨンであればドイツの軍事秘密を話してもいいということだ。
パク・ソヨン
(パク・ソヨンであれば軍事秘密を漏らしてもいい……
つまり、それは私が韓国を裏切ったということをすでに知っているということを意味する)
皇愛梨
「こいつがパク・ソヨンであることは間違いないよ。
見たらわかるだろう?」
私が何か言う前に皇がせっつく様に私の言葉を遮る。
イライラしすぎだ。
こいつの頭の中は柊のことでいっぱいで大切なことを見落としかねない。
パク・テヒ
「私が離反したことを誰から聞いた?」
そこは必ず聞き出さなければならない。
私が韓国を離反したことを知っているのはこの家にいる人間とテヒだけ。
テヒが私を裏切るわけがないから必然的にドイツに情報を漏らしたのはここの人間ということになる。
ソフィア・ベルガラ
「ふふ、気になりますよね。もちろんお伝えしますよ。
私たちはハン・ジヨン様からこの情報をいただきました。」
パク・ソヨン
「なにっ!?」
ハン・ジヨンだとっ
私が何か言おうとしたところを再び皇が遮る。
皇愛梨
「お前らの事情なんかどうだっていいんだよ。それより美香の話ってなによ」
パク・ソヨン
「おっ、おいっっ」
ソフィア・ベルガラ
「失礼しました。柊美香さんの居場所についてですね」
皇のやつ、やっぱり焦っている。
この話はもっと深掘りするべきだ。
私がこの家にいたことはこの家の中の住人しか知らないし、韓国を離反したのもこの家の中でのこと。
ハン・ジヨンが韓国を裏切ってドイツに加担していたとしてこの家の内情を知ることができるわけがない。
必ず私の離反をジヨンに伝えた人間がいるはずなんだ。
つまり、咲希、柊美希のどちらかが私たちを裏切っているのかもしれないということ。
そんなことも気付けないくらい焦っているのか、皇のやつ
ソフィア・ベルガラ
「彼女はソヨン様にもお聞きになったかもしれませんがある工場に幽閉されています。
彼女のこと、救出しに行くつもりなんでしょう?」
やはり、情報が漏れている。
ジヨンから聞いたにしても一体どこから情報が漏れた?
美希か?
咲希か?
どちらが裏切り者なんだ?
皇愛梨
「だったらどうしたというのかしら?」
なんとなく皇は話の展開が読めたらしい。
少し冷静さを取り戻し、いつもの冷酷だが落ち着いた声のトーンに戻っていた。
ソフィア・ベルガラ
「私たちもご同行させてもらいますか?
正確に言うと別経路で同日に潜入してほしいのです。」
皇愛梨
「いつ?」
ソフィア・ベルガラ
「今からちょうど3週間後です」
パク・ソヨン
「話にならないな」
テヨンの処刑は明日だ。
こいつらの事情で引き伸ばされてたまるか
皇愛梨
「決行日は明日だ。」
パク・ソヨン
(…………………)
皇も美香のことが心配なのだろう。
待つ気がないみたいで安心した。
ソフィア・ベルガラ
「お二人の懸念は最もです。
ですが私の提案はお二人にもメリットがございます。」
パク・ソヨン
「どういう意味だ?」
ソフィア・ベルガラ
「まず1つ目のメリット。
ジヨン様を通じて柊美香の搾乳は一時的に中止していただいています。
3週間後には体力も戻り、通常通りの生活を送るまで回復していることでしょう。
逆に今、柊美香は搾乳により体力が疲弊して立つこともままならないとのこと。
このままでは逃亡にも支障が出るのでは?」
皇愛梨
「…………………………」
皇が突き刺すような瞳でソフィアを見つめる。
ソフィア・ベルガラ
「2つ目のメリット。
ジヨン様を通じてテヨン様の処刑は一時的に延期させて頂いてます。
我々と同時に作戦を遂行したほうが成功率は格段に上がるでしょう?」
コイツ、交渉になれてやがる。
私達が断らない条件を整えてから交渉にのぞんでいる。
皇愛梨
「いいだろう。お前の口車に乗ってやる。
ソヨンもいいな?」
パク・ソヨン
「………ああ。」
確かに悪くない提案。
ただ、こうなると韓国政府の日本侵略は大きく後退することになるだろうな。
私は本当の国賊になるわけだ。
皇愛梨
「まさかドイツ人と韓国人と私で組むことになるとはな」
まあそれでも構わない。
大韓民国総督府にはもとから不満があったのだ。
ユジン様からともかくミリンやサランべが実効支配している大韓民国総督府に未練はない。
ソフィア・ベルガラ
「話がまとまりましたね。私も軍部にいい報告ができます。
では私はこれで……
さあ、帰ろうか、勇斗」
勇斗と呼ばれた青年は皇のことを観察していたのかずっと彼女を観ていた。
皇愛梨
「なんだ、クソガキ。」
皇が鋭い視線を奴隷の青年に向ける。
相変わらずところ構わず噛みつく女だ。
こんなにも殺気だった女だっただろうか?
これも美香がいなくなったからか?
相澤勇斗
「ひっ す、すいません……」
ソフィア・ベルガラ
「私の奴隷が失礼しました。
このコは私のお気に入りですのでお許しください。」
ソフィアはそう言うと奴隷の鎖をひっぱり深くお辞儀する。
皇愛梨
「まあ、いい。
では決行日は3週間後。
約束、違(たが)えるなよ」
ソフィア・ベルガラ
「もちろんです」
ドイツ人はそう言うと奴隷を連れて出ていった。


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