100話 蝕祭の儀 逃走の果てに 

崇韓

 荒い息が洞窟の中に響く。 

「ハァッ ハァッ ハァッ……!」 

 俺、新城修一は必死に走り続けた。すぐ後ろには如月優衣。だが、突然―― 

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「ッ! あぁっ!」 

 ドサッ。 

 優衣が地面に倒れ込んだ。 

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「優衣っ、大丈夫か!?」 

 駆け寄ると、彼女は膝を押さえて苦しそうに息をしている。膝から血がにじんでいた。 

「ハァッ……ハァッ……うん、大丈夫……」 

 本当は痛いはずだ。でも今は休んでいる暇はない。 

「ごめんな、頑張ってくれ。とにかくここを二人で抜け出そう!」 

「うんっ!」 

 優衣は頷き、再び走り出す。 

 二度と……二度とお前を失いたくないんだ。 

 心の中で強く誓う。 

 しばらく走ると、優衣が息をのんだ。 

「修一っ、あれっ!」 

「くっ……!」 

 目の前に立ちはだかるのは、背の高い蒼髪の女――ナム・ミニョン。 

「はぁい、こんにちは。新城くんに優衣ちゃん。」 

 余裕の笑みを浮かべている。 

 ……でかい。俺より10センチ以上はあるんじゃないか?今まで見たどの女よりも威圧感がある。 

「優衣、俺がこいつを食い止める。その間に逃げろ!」 

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「えっ、そんな……! 一人で逃げても、この先どうすればいいかわからないよ!」 

 優衣だけは……失いたくない。 

「俺は脚を怪我してる。どうせ逃げ切れない。それに……二度と、二度とお前を失いたくないんだ。」 

 優衣は不安げに目を揺らした。 

「……さっきはそんなこと言ってなかったじゃんっ!」 

「口論してる暇はない。俺が抑えるから、なんとか一人で逃げるんだ!」 

 返事を待たずに俺は前に出る。足の怪我なんて関係ない。俺は全力でミニョンに向かって走った。 

「あら、新城くん。とってもかっこいいじゃない。」 

 ナム・ミニョンがにやりと笑い、構えをとる。

4

ミニョンが構えをとっただけで俺は体が震えあがるのがわかった。

ライオンにシマウマがとびかかるようなものだ。

それでも・・・・それでも引くわけにはいかない。 

 ――負けるわけにはいかない。 

俺の蹴りを、ミニョンは片手で軽々と受け止める。 

そのまま腕を回され、がっちりと羽交い締めにされた。 

やっぱりすごい力だ。 

何も武器を持っていない俺じゃ、とても敵う相手じゃない。 

それでも必死に抵抗しようと、ミニョンの体にしがみつく。けれど、びくともしなかった。 

「――あら? 積極的じゃない?」 

余裕の笑みを浮かべながら、ミニョンが楽しそうに言う。 

「優衣っ! 今だ、走れっ!」 

俺は全力でミニョンを押さえつけた。 

だが―― 

「いっ……いやっっっ!!!」 

優衣の悲鳴が響く。 

――えっ!? 

ハッとして、優衣の方を見る。 

「つぅーかまえた♪」 

楽しそうな声の主は、緑色の髪の女――ソンギョンだった。 

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しまった。こいつもいたのか……! 

「はっ、離せっ! 優衣に手を出すなっ!」 

焦る俺をよそに、ミニョンがクスクスと笑う。 

「へぇ……自分のことより女の子を心配するなんて……お姉さん、感心しちゃうなぁ」 

ミニョンの腕は鉄のように固く、引き剥がすことなど到底できない。 

何とかして抜け出そうと、俺はめちゃくちゃな体勢のまま拳を振り下ろす。だが、力がうまく入らず、まるで効果がない。 

「修一っ! 修一っ! た、助けてっっっ!!!」 

必死に叫ぶ優衣の声が、耳に突き刺さる。 

「――あらあら、暴れないでよ? そんなことしても無駄なんだからさ」 

優しく諭すような口調で、ソンギョンが優衣の足を払う。 

バランスを崩した優衣が倒れ込んだところを、そのまま地面に押さえつけた。 

「せっかくの蝕祭だし――美味しくいただこうかしら?」 

ミニョンは楽しげにそう言うと、俺を抱きしめたまま顔を近づけ、そのまま唇を奪った。 

「ちょっ……!? んぐっ……! はぁ……っ、うぅ……」 

驚く間もなく、顎を掴まれ、無理やり舌を差し込まれる。 

俺はなんとか抵抗しようと顔を押し返そうとするが、すぐに手を捕まれ、封じられてしまった。 

「抵抗してもいいけど――優衣ちゃんがどうなっても知らないわよ?」 

ミニョンがくすりと笑いながら、甘く囁く。 

「なっ……くっ……!」 

優衣の名を出された瞬間、全身の力が抜けていった。 

優衣を失えば、俺は何のためにこいつらに抵抗しているのかわからない。 

「しゅ、修一……」 

震えた声で俺を呼ぶ優衣が、心配そうにこちらを見つめていた。 

――やっぱり、以前とは違う。 

洗脳された性奴隷なんかじゃない。 

今の優衣は、ただの普通の女の子に見える。 

それなら・・・・

以前の優衣なら俺は守ってあげたい

俺は歯を食いしばってミニョンの前に跪いた。

「わかればいいのよ。優しく搾り取ってあげるから、私に身を任せなさい?」 

ミニョンが妖しく微笑む。 

――ふざけるな。 

そう言いたいが、抵抗すれば優衣の命が危ない。 

俺は悔しさを噛み締めながら、ミニョンを睨みつけることしかできなかった。 

そんな俺の顎を、ミニョンが指先で軽く持ち上げる。 

じっくりと俺の顔を観察するように、細めた瞳が値踏みするように動いた。 

「……ふぅん。そんな態度を取るんだ?」 

9

ミニョンの表情がわずかに歪む。 

――怒っている……? 

いや、違う。 

これは、これからいたぶる獲物を前にした、サディスティックな笑みだった。 

ナム・ミニョン   

「まず第一に、キミは理解しないといけないわね……日本人の立場を。」   

グイッ。   

突然、俺の髪が掴まれ、そのまま地面に押しつけられた。   

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ゴッ。   

彼女のヒールが俺の頭を地面に押しつぶす。鈍い痛みが頭全体に広がる。   

ゴリゴリゴリ……   

ヒールが頭を擦りつける音が耳に響く。   

新城修一   

「ぐああぁぁぁぁっっっ!」   

如月優衣   

「しゅっ、修一っ!」   

優衣の悲鳴が洞窟内に反響する。その声は俺の胸を締めつける。   

新城修一   

「て、てめぇっっ!」   

ナム・ミニョン   

「修一くん、よく見なさい。眼の前にいるあなたの恋人の姿を。」   

チャン・ソンギョン   

「くくく……お前の恋人、なかなか喰いごたえのありそうな身体してるじゃないか。」   

ソンギョンが優衣の胸を揉みしだく。   

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如月優衣   

「あぅ……」   

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